行ったことのあるところ…東京 4(神田界隈続々)

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私に神田の古書街をふらつく機会が訪れたのは…これが本当に情けないことなんだけれども正確に思い出せない。それはたぶん職についてからではなかったと思う。なぜならば、その初めての神田行の際に江戸時代の僧、契沖の著した万葉代匠記早稲田大学出版部のものを購入したのだが、これが全巻揃ったものではなかったので、欠けている巻は大学の研究室のコピー機でなんとかした記憶があるのだ。となると、大学の3年か4年の頃のことになる。大和に出て初めの頃は盆暮れには郷里の宮城に帰っていた私だが、3年生の頃にもなると、帰郷は年の暮れだけになっていたから、時期はそこに限定できる。

わざわざ東京まででかけて古書街をふらつくなんてことは、当時の私の経済状況では無理な話で、帰郷のついでに東京に立ち寄る機会を待つしかった。

日にちは限定できる。12月30日だ。

帰郷のための費用を稼ぐために、そして少しでも懐中が豊かに年末年始を迎えられるように年の暮れのギリギリまでアルバイトをしていたからだ。それにその年は、神田の古書街をふらつくという大目標を持っていたので、少しでも懐中を豊かにしておかなければならない。となると、卒業論文を書いていた4年生の時というのは考えづらい…というふうに考えると、私の初めての神田行は大学の3年の年末…12月30日ということになる。

その日の朝、私が起きたのは5時30頃。すぐさま着替えて高田市駅に向かう。6時前にはもう橿原神宮行の電車の中だ。そこで京都行の急行に乗り換え1時間半ほど。京都の駅で新幹線に乗り換えだ。席の指定はない。自由席だ。それならば来た列車にすぐに乗れるからだ。神田での滞在時間を少しでも長くするためにできるだけ早い列車に乗りたかったのだ。

そして、新幹線に乗り込んですぐさま食堂車に向かい、朝の定食を注文する。高田市駅で近鉄の橿原神宮行に乗り込んで、ここまで2時間前後。まだ何も食べていなかった。新幹線の朝の定食は他にもあったんだろうけれど、私が注文したのはトーストとゆで卵とサラダ、そして紅茶のセットである。デザートとかはついていなかったと思う。まるで喫茶店のモーニングサービスだが、これで1000円は取られたと思う。当時、私がゆくような大和の喫茶店ではモーニングサービスは400円〜500円で供されていたから、新幹線のそれはかなり割高だった。

それでも、その注文一つで東京までの3時間の席が確保されるのだ。少々の贅沢は目をつぶっておこう。

ということで、東京駅についたのは11時あっちこっち。山手線に乗り換え、秋葉原だったかな?で中央線に乗り換える。御茶ノ水の駅の改札を抜けたのは11時の30分をまわっていたと思う。改札口を出てのカレースタンドに入る。昼食である。これから買物次第では重いものぶら下げて歩かねばならない。空腹では持たぬ。

値の張らない、というよりは安いカレーを頬張り腹も満たされた。私はいよいよ神田神保町に繰り出した…

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