お彼岸のことである。明日香の方に車を走らせた。
彼岸花を見るためにである。明日香は大和でも有数の彼岸花の名所。毎年のように車を走らせ、車窓から畔道を真っ直ぐに走る「紅」を楽しんでいた。ここ2,3年ご無沙汰をしていたので、妻からの誘いもあって数年ぶりでこれを見に言った。
ところが、明日香に近づき、もうそろそろ現れてきてもいいはずの「紅」がほとんど見えない。長く伸びた雑草の間にチラリリラリ見えるだけである。一番の名所、石舞台とその裏手の阪田の棚田、そしてそこからほど近い稲渕の棚田に行ってもほとんど彼岸花の姿は見えない。
これはどうしたことだと、ちょいと調べてみる。
なんでも、ここ数年この地域の彼岸花は、その球根を猪に掘り起こされてしまったのだそうだ。零年この時期にこの周辺で行われていた「彼岸花祭り」
それにしても、この広い明日香のすべての彼岸花の球根が猪の被害にあったのだろうかと怪訝な思いを抱きながら、帰途につく。その道筋にもほんのわずかの彼岸花が咲いているだけなのである。
ひょっとして季節がまだ早かったのではないか…
そんな思いで、昔書いたものをちょいと読み返してみた。9月23日の飛鳥寺周辺の彼岸花はもう終わりかけている。またそこにも書いてあるのだが、ちょうどそこから1年前に薄氷堂さんがやまとにいらっしゃっており、その際に飛鳥寺にご案内した。その時の彼岸花もピークを過ぎていた記憶が確かにある。
彼岸花がこれからだ…なんてことはないと、その時の私は思った。
それにしても、その他の場所においてもいっこうに彼岸花の姿が見えない。
これはどうしたことだと思っていると、10月に近づくにつれて畦道の「紅」は日ごとに鮮やかになり、10月に入るとまさにその盛りを迎えた。感覚的には例年より10日以上遅い花の盛りである。
私は彼岸花がその盛りを迎えるのは日照時間によるものだと思っていた。だから、少々の気温の高低があってもほぼ同じ時期に開花するのだと思い込んでいた。だから、今年の場合は彼岸花自体がどこかに行ってしまったのではないか行ってしまうわけはないので咲かなくなってしまったが正しい…そんなふうに思ってしまったのである。しかあ〜しである。それから、徐々に道端の「紅」は増え始め、盛りを迎えるに至った。
これはどうしたことかと調べてみたら、どうやら彼岸花の開花には日照時間よりも気温が大きく関わっていることを知った。
みんなの広場(日本植物整理学会)
少々の気温差があっても毎年ほぼ同じ頃に咲き始めていたので私はすっかり日照時間が彼岸花の開花に影響するものだと思い込んでいた。
ただ、今年は「少々の気温差」でなかっただけのことであったのだ。それほどまでのこの夏から秋にかけては扱ったのだ。
さて、彼岸花がほぼ終わりを迎えた頃、我が家のお隣さんの庭先にこんな花が咲いた。
黄色い彼岸花である。
リコリスというのだそうな。今際空き家になったお隣さんではあるが、以前お住まいになっていた方が植えたものだそうだ。
主人はいなくなっても、毎年可憐な花を咲かせている。
年年歳歳花相似
歳歳年年人不同
コメント
純白の彼岸花は京都でみかけましたが、黄色いのを見るのは初めてです。
私もここ以外では、ネット以外では見たことがありません。