前回は「全く当てにならない、我が記憶である。」結んだのだが、40年近くも前のことなのだから仕方のないことであるとも言える。てなことで、その「あてのならない、我が記憶」をちょいと補助するために、神田古書街のホームページ「JIMBOU」の「神保町古書店マップ」をちょいと眺めてみる。
するといくつかの耳に覚えのある店名が浮かんでくる。
まずは日本書房から真っ直ぐに通りを南に下って程なくの場所にある誠心堂書店、さらに下って神保町の交差点を左に曲がってすぐの大雲堂書店、そしてその並びには一誠堂書店、澤口書店地図では2つの澤口書店が並んでいるがその記憶はあんまりない。さらには田村書店、そして小宮山書店。前回申し上げた八木書店はその先にある。
「古書店マップ」を眺めていると他にもあれこれ思い出す名前があるが、あまり確かではない記憶を辿っても仕方がない。それらの中の2つほど記憶にしっかりと残っていることを…
1つ目は、上に紹介した小宮山書店。
ご経験の方も少なくはないかと思うが、私のように地方から勇んでこのような古書街に出てくると、この次はいつ来ることかとの思いから、有り金のすべてをと言っても大した金額ではないが費やそうとあれこれと買い漁ることになる。その日、古書のために予め用意したからのカバンはすでに満杯になり、とある古書店書店名は残念ながら失念において二重にした紙袋を頂いていたが、それすらもう満杯に近づいていた。両手にぶら下げた手荷物は帰郷用の荷物を含め、結構な量になっていた。
そんな状態で訪れたのが小宮山書店である。両手に荷物を持っていては書棚の本が気になってもいちいち取り出して状態を確認することもなかなか面倒である。両手の荷物をいったん床においては本を取り出し、元に戻す。そして少し移動しては同じことを繰り返す。すると、それを見かねた店員さんが声をかけてくれた。
お荷物、お預かりしましょうか。これからも何軒かお回りになるのなら、最後に取りに来てくださればいいですよ。
といった内容のお言葉だったと思う。私は遠慮なくそのお言葉に従った。おそらくは私と同じじようなことをしている人たちを、この店員さんはいつも見ているんだろうなあと思いながら私はお店を後にした。まことにありがたい心遣いであった。
そして…2つ目。
小宮山書店を後にしてから行った店だ。店の名前は残念ながら思い出せない。その店にはそれまで私の中にあまり認識のなかった本屋さんこれは私のそれまでの勉強不足を示すの書籍が並んでいた。勉誠社というなの出版社だ。その出版社の出している文庫がずらりと並んでいる一角があった。馴染みのある書名が並ぶ。早速手にとって考えもせずに購入したのが以下の書である。
「萬葉集訓義辨證」「萬葉集字音辨證」「萬葉集文字辨證」木村正辭著
「倭名類聚抄 元和三年古活字版 二十巻本 附関係資料集」源順撰 中田祝夫編
「古京遺文」狩谷棭斎著 山田孝雄 香取秀真増補
いずれも2000円はしていなかったと思うが、このお店ではほぼ新品のこの5冊を低下の割引で売っていらっしゃった。これらの書物をその後の私が活用しているかどうかは甚だ疑問ではあるが、今でも我が書棚の目に付く場所に位置を占めていることは言うまでもない。
さあて、夢にまで見た本当は夢に見たことはない神田古書街巡りの時間も終わりに近づいてきた。私はのもつを預かってくれている小宮山書店に戻り、荷物を預かっていただいたお礼に更に一冊購入。上野の駅を目指した。
てなことで、表題にもある通りようやく「行ったことのあるところ…東京」をやっと終わることができた。