本当は前回までの続きで「万葉集の学びはじめ 5」を書こうと思っていたのだが、今回はちょいと寄り道。
私は昨年の8月に60才の誕生日を迎えた。この3月31日をもってめでたく退職辞令を拝受し、4年前に赴任した今の職場を離れる・・・予定であったのだが、先日上からのお達しで、再任用という形でもう1年(あるいは数年)、今の職場にとどまることになった。
思い返せば30数年前、大学を出て2年ほど大阪ではたらいていた私が、大和の地で働き始めたのが今の職場であるから、今更ながら縁の深い職場であると感じる次第である。
なんてことを思いながら、とある予感に基づき、グーグルマップを立ち上げ、ちょいとした実験を行ってみた。
まずグーグルマップにて「山部赤人の墓」を探し出す。
続いてその地点で右クリックして現れたメニューの一番下「距離を測定」をクリックする。続いて地図をぐっと南東に移動させ、大宇陀町体育館の前庭のある1点を探す。その一点におかれているのは
柿本人麻呂である。その地名は宇陀市大宇陀中庄、万葉集では阿騎野と詠まれた場所である。そう・・・柿本人麻呂が
東の 野にかぎろひの 立つ見えて 返り見すれば 月かたぶきぬ
と歌った、その地である。写真の像はこの歌にちなみ建立されたものである。
ともあれ、その1点をクリックする。するとたちどころに地図上の、この2点間に直線が引かれ、その直線距離が10.01kmと表示される。今の場合、この10.01kmという距離はさほど大事ではない。問題はその2点間の引かれた直線である。
私はさっきの予感に基づいて、その直線を北東へとたどって行く。
思っていたとおりである。山部赤人の墓から4kmちょっとの場所に、我が職場はあった。
かつて一世を風靡した「レイライン」を私は信奉するものではない。そしてここに示した直線は、その「レイライン」と呼べるような代物ですらないことも重々承知している。しかしながら、このような事実を知ってしまうとちょいとうれしい気持ちになってしまうことを禁じ得ない。しかも方角を考えれば山部赤人は我が職場より鬼門の方角に眠り、柿本人麻呂の馬上像は裏鬼門の方角に安置されている。
万葉集を代表する2人の歌人が私を守護してくれている・・・そんな他愛もない勝手な妄想を楽しむには十分な事実である。
ところで、私は定年退職の日を前に他愛もない妄想に浸っていたとき、大和に住み万葉集を愛好するものにとってきわめて大きなニュースが入ってきた。奈良大学の上野先生がこの3月31日をもって奈良大学を離れ、先生の母校である東京の大学に赴任されるというニュースである。
コメント
長きにわたるお勤め、お疲れ様です。
そして、再任用、おめでとうございます。
ゴールポストが遠くに行ってしまった感がおありかとも思いますが、昔と違って、平均寿命も延びたし、まだまだお元気ですものね。
引き続き、お元気にご活躍されますよ、お祈り申し上げます。
U先生(……って、イニシャルにする意味があまりないような(^_^;)のこと、驚きました。U先生と言えば奈良大学ですものね。
源さんへ
確かに新聞記事の紹介ですからU先生は変ですよね。
つい これまでの癖が出ちゃいました。このあたりきちんんとお名前を書くべきか、イニシャルにするべきか、線引きが難しいですね。
今回はきちんとお名前を書くようにします
。
再任用については一応65歳までということなのですが、その後も違った形での任用はあるようです。
先輩の源さんをお手本に精進いたします。
gatayanさん、長年のお勤めお疲れ様でした。
おそらくひとつの職場でお勤めになったと想像します。
これはとても凄いことで、転職が多かった自分です。
不況で新人の採用が減っていると聞きます。
とすれば、高齢者の雇用延長になるんですね。
gatayanさんは体格が良くてお元気そうなので、
まだまだ現役でご活躍なさると思います。
只野さんへ
一つの職場ではないですよ。
なにせ転勤がつきものの仕事ですから。
大本は一つでも現場が違えば、職場の雰囲気も全く違う・・・これが私の仕事です。
>新人の採用が減っていると聞きます
私らのようなものが居座っているので、若い人たちの仕事を奪っているような罪悪感がしないでもないんですが、私どもも生活がありますのでねえ・・・年金の支給も先の伸びちゃいましたしね。
まあ、何か若い人たちに伝えることができればいいんですが…多分、それが一番大切な仕事なんでしょうけどね。
どうもお疲れさまでした。
今どき六十歳で退職というのはちと早すぎますよね。仮にお金の心配がないとしても、体が丈夫なのに働かずに暮すというのは、精神的にかなりつらいものがあります。退職後一年間だけ読書に専念したぼくがいうんだからまちがいありません。一年で音を上げて仕事をみつけましたよ。
六十を過ぎるとだんだん個人差が大きくなってくるので一概にはいえませんが、三友亭先生ならきっと八十歳までは大丈夫(笑)、どうか一層のご活躍を!
薄氷堂さんへ
>一年で音を上げて・・・
そうですね、60歳は今の世においてはちょいと早すぎますね。
私の家はご存じの通り山辺の道のほとりなのですが、休日に元気に歩いているのはそのあたりの年齢の方ばかり。あんなに元気ならば…働かないのはかえってつらいようにも思います。
とくに我が家では、死ぬまで働けと厳命されてますんでねえ…