好文木と女子校

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私はこの「好文」という言葉、10数年前まで知らなかったのですが、ちょいとしたきっかけで知ることになりました。

これは前回書いたものに玉村の源さんいただいたコメントにお返事した、その一節である。記事中では

興味深かったのは、その名の由来。「東見記」という書物が引くところの「好文木」の項に「晉起居注」という書物に「晉武好文則梅開、廢學則梅不開云云」とあるとして「梅云好文木」と断じているのが出典なのだそうな。

なんてふうに書いたが、偕楽園を訪ねた際にはこんなことはちいっとも知らなかった。だから、その時点にあって、私はただ・・・好文亭という、まことに趣味の良い建物の名を記憶したに過ぎなかった。

それが上記のような「いわれ」と結びついたのは、それから10数年もたってからのこと・・・

私の生まれ育った宮城は戦後の教育改革が不徹底だったのかどうかは知らないが、かなり遅い時期まで公立の高等学校は男女別学が基本であった。私が高校にいたころはいくつかの実業高校と当時出来立ての新設校を除いてはすべての公立高校が男女別学。

それが、やっとのことで、全ての高校共学化しなければならない・・・となったのは我が母校で言えば平成18年からのこと(たぶん全県的にも)。

ただ、共学化するといっても、単にこれまでの男子校は女子生徒を、女子校は男子生徒を受け入れるようにすればいいというような単純なわけにはいかない。例えば、我が母校のホームページの沿革を見るとその前年の17年12月に「東校舎大規模改造・耐震補強・女子便所・・・・棟増築工事竣工」とある。

つまりこれまで男子しかいなかった高校だから、女子が過ごせるような設備が・・・きわめて貧弱なのだ私の在校中は校内にいた女の人は保健室の先生と事務のお姉さんと食堂のおばちゃんだけであった。それを全生徒の半数と予想される女子の生徒にも対応できるようにしなければならない。何もトイレだけではない。体育館の更衣室、運動部の部室、あれこれと仕様を変えて行かなければならない。

校名もそんな中の一つである。

仙台市内を除けば、私の高校の頃は、例えば○○高校という男子校があれば、同じ市内に○○女子校という女子校があった。まあ、至極当然な命名だったとは思うのだが、この共学化の際にふと困ったことが起きた。男子校はそのまま○○高校で差し支えないが、女子校の方は○○女子校を名乗るわけにはいかない。けれども、「女子」を取っただけでは、これまでの男子校の方とおんなじになってしまう。いきおい、校名変更を迫られることになったのだ。

そんな中のある女子校の新校名についての話に私はうなった。それは今から10年ちょっと前のこと、私は母校出身の関西在住者の集まりの席にいた。その時、母校から派遣された同窓会担当の先生のお話を聞いた時のことだ。

私が出たのは宮城第2の都市(というほどでもないが)、石巻にある石巻高校。日和山という小高い丘の海を望む斜面に立っている。そしてその西麓に石巻女子高校があった。その石巻女子高校が今回の校名変更にあたって、なるべく今までの「石巻女子」という歴史ある名称はなくしたくない。さりとて男子生徒が入ってくるのに校名に「女子」を残すわけにはいかない。そこで・・・さる先生は思いついた。「女」「子」を横に並べれば、「好」となる。そんでもって・・・石巻女子高校の校旗に描かれているのは「白梅」・・・「好文木」である。

そこで考えついたの、石巻好文館高校という校名。「白梅」は当初(大正10年)は「清潔で毅然と生活できる内面豊かな生徒たるべし」ということで学校のシンボルに選ばれたらしいが、「好文」という字面でこれを示せば、「晉武好文則梅開、廢學則梅不開云云」という故事も相まって怠りなく学び続けるべしとの理念をそこに示すことができるようになる。

見事というほかにない。

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コメント

  1. 吉崎 より:

    うなりました。

  2. 玉村の源さん より:

    知恵者がいらしたのですね。見事と思います。
    「むべ山風を嵐といふらむ」と一緒ですね。

     群馬県も男子校・女子高の県です。共学化が進んできましたが、前橋高校・前橋女子高、高崎高校・高崎女子高はまだそのままです。
     共学化に当たっては、それぞれが共学になるのではなく、統合という形を取ることが多いように思います。名前にも気を使って、藤岡高校と藤岡女子高が統合してできた高校は藤岡中央高校となりました。

    • 三友亭主人 より:

      源さんへ

      男子校出身のものとしては、一種のノスタルジックな思いはありますが、
      やはり共に学ぶというのが自然でしょうね。第一、男ばっかりになると・・・むさくるしくっていけません(笑)

      >「むべ山風を嵐といふらむ」と一緒ですね。

      この歌については思い出がありまして・・・学生の頃、演習の発表が当たりまして、四苦八苦しながら報告が終わり先生のお話を聞いていると・・・

      「嵐」は表に出てきているけど、この歌にはもっと漢字が隠れている可能性があるよということで

      「秋の草木の」の句をあげ、「艸+秋」で「萩」、「木+秋」で「楸」になる。

      と、されていたのを思い出しました。

  3. 只野乙山 より:

    gatayanさん、こんにちは。
    WordPress、大変なことでしたね。
    一時、アクセスできぬこともありました。

    石巻好文館高校の話、素敵ですね。
    大阪でも共学化の流れはあったと思いますが、
    天王寺高校とか北野高校など、
    そのままの校名が多いのではないかと思います。

    • 三友亭主人 より:

      只野さんへ

      >一時、アクセスできぬこともありました。

      大分驚きましたが、なんとここ個まで回復しました。
      いくつかの記事はもったいないことをしましたが(もったいないと思うのは私だけかもしれませんが)、被害は少なかったので・・・まあ良しとしておきたいと思います。

      >石巻好文館高校の話、素敵ですね。

      この件は脱帽するのみとしか言えませんね・・・と私は思います。